【障がい者コラム】障がい者雇用数水増し問題の底は?そしてその先は?

【障がい者コラム】障がい者雇用数水増し問題の底は?01

障がい者生活のセイタロウです。
このブログのこの記事をご覧くださりありがとうございます。

私は、頚椎損傷(受傷部位:C6)四肢麻痺という比較的重度な身体障害がある手動車いすユーザー です。

幸い頭は何とか無事だった?…ので、普段は障害のある方々の支援をする某障害者生活支援センターに勤務して相談支援業務を行っておりますが、そういった日々の業務経験を積み重ねるうちに、いつしか社会保障制度や社会福祉全般に詳しくなり、気が付けば社会福祉士という資格も取得することが出来ていたのです。

そんな私セイタロウが、そういった仕事を通じて、身体、知的、精神という障害がある方々の支援をさせていただくうちに、今まで気が付かなかったような様々な世の中の仕組みのようなものに注目するようになりました。


参考
セイタロウのプロフィール障がい者生活管理人&著者セイタロウの自己紹介

今後それら内容についてはこの【障がい者コラム】のコーナーで徐々に紹介していこうと考えております。こういった内容に、ご興味がある方やない方にとっても、“へぇ~”と言っていただけるようなお役にたてるような内容を目指して情報発信していきたい所存でございます。

障がい者雇用の事実と実感

さて、この度この【障がい者コラム】のコーナーで取り上げるのは、『障がい者雇用数水増し問題の底は?そしてその先は?』です。

前項にも書きましたが、私は障がい者の方々の生活を支援する事業所に勤めているので、日々様々な相談案件に対応しておりますが、障がいのある方の就職支援なども数多く対応させていただきました。

ところで、障がい者雇用と言っても大きく分けて2つに分類されていることをご存知でしょうか?

① 1つめは、障害者総合支援法に基づく障害福祉サービスにて就労機会を提供される「就労継続支援A型」や「就労継続支援B型」、または「就労以降支援」などの社会福祉制度に則ったサービスを利用するもの。

② 2つめは、一般企業や官公庁などが国(厚生労働省)から定められた、障害者雇用制度に則って、雇用人数に対して数%の規定数以上の障がい者を雇用しなければならない、との規定によって障がい者が雇われているもの。

以上、上記2つに分類される障がい者雇用形態があります。

昨今問題となっている障がい者雇用水増しに関する問題は、上記で示した②による雇用形態で、しかも、障がい者雇用を水増しをしていたのが障がい者雇用を進めている側の中央省庁(国家側)だったかから、法定障がい者雇用率を下回ると違反金を支払わなければならない一般企業からしたら、「ふざけるな!」や「冗談じゃない!」などと怒りをあらわにするのは当然な訳です。

ところが、一部報道では中央省庁などで発覚したこの度の障がい者雇用水増し問題において、“処分を受けた者はいない”とのこと。

障害者雇用水増し処分せず 厚労省方針「違法行為なし」

中央省庁の障害者雇用水増し問題を巡り、厚生労働省は十二日、同省職員の処分を見送る方針を固めた。制度を担当する官庁として他省庁に対する実態把握が行き届いていなかったことや、厚労省自体の不適切計上いずれの面でも、同省は「道義的な責任はあるが、処分に値する違法な行為はなかった」としている。

厚労省以外で不適切計上があった二十七の行政機関で、十二日までに関係者の処分を公表している機関はなく、今後、厚労省に追随して処分しない可能性もある。長年にわたりずさんな運用が行われたことへの責任が一切不問にされれば、野党や障害者団体からの批判は必至だ。

引用:中日新聞(2018年11月13日朝刊)http://www.chunichi.co.jp/article/front/list/CK2018111302000058.html

一般企業では、障がい者法定雇用率を下回ると多くの違反金を支払い、企業によっては「自慢にはならないが…障がい者雇用違反金は、これまで通算すると億単位で払ってきた…」とテレビのニュース番組で話す一般企業の担当者が話していたが、そんな企業側からしたらこの度の中央官庁の“処分なし”は、とても容認できる内容ではないだろう。

実は、私が勤める場所も地方行政の管轄する施設内に働いていますが、バリアフリーやユニバーサルデザインが整っている比較的新しい施設にもかかわらず、200名以上が働いている施設内で車いす利用者は私一人。

しかも、私は地方行政が運営する施設の指定管理者制度で入っている外部機関として働いている身なので、そうなると、実質その立派な施設に働く車イス利用者公務員はゼロなのです。(杖を突いたり方麻痺の方は数名いますが…)

さらに、私が住む市は政令指定都市ですが、各区の区役所や市役所内に働いている車イス利用者の人数はほんの数名で、前々から行政のようなバリアフリーが整っている建物こそ車いす利用者が当たり前のように働いてしかるべきだと考えていたのですが、今回の中央省庁における障がい者雇用水増し問題が明るみに出てて改めて考えてみると、私が住むこの政令指定都市もかなり怪しいし…と疑わざるを得ません。

このブログをご覧の皆様も、是非お住まいの市区町村役場に勤める車いす利用者を探してみてください。

もちろん障がい者雇用=車いす利用者ではないので、身体障害であれば内部障害や聴覚障害、その他に知的障害や精神障害の雇用者も障がい者雇用対象者となるので、車いす利用者が少ない=障がい者雇用率が低いといった定義には当てはまりませんが、車いす利用者を多く見かける市区町役場は、それだけ障がい者雇用に力を入れている行政といったバロメーターになりうるのではないのか?と、個人的にはそう思います。

それにしてもこの障がい者雇用水増し問題は、もしかしたら中央省庁でそうだったということは、全国の地方行政レベルで見たらさらなる闇が潜んでいるように思えてなりませんが、実はこの障がい者雇用問題は、かなり闇が深い問題なのかもしれません。

障がい者雇用率制度について

さて、先ほどから取り上げている障がい者雇用水増しですが、この項では、そもそも厚生労働省で打ち出している法定の障がい者雇用率について改めておさらいしてみます。

そこでいきなりですが、今現在の障がい者雇用率はご存知でしょうか?

私、障がい者当事者であり社会福祉士でもありますが、突然このような質問をされてもお恥ずかしながらなんとなく…しかお答えできません。(キッパリ)

実は、障がい者雇用率は平成30年度4月1日からそれまでの率から改定が行われました。

厚生労働省に詳しく記載されているので、そちらを抜粋して記載させていただきます。

【障がい者コラム】障がい者雇用数水増し問題の底は?02

出典:https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/koyou/shougaisha/04.html

さて、上記の厚生労働省で定めている障がい者の法定雇用率はご覧のとおりで、民間企業は2.2%、国および地方公共団体等は2.5%、都道府県等の教育委員会は2.4%です。

雇用総数の人数割合については以下の通り。

【障がい者コラム】障がい者雇用数水増し問題の底は?03

出典:https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/koyou/shougaisha/04.html

以上のように毎年6月1日に、管轄のハローワークへ障がい者雇用状況を報告しなければならないのですが、中央省庁ではこの報告において実際に障害者手帳を持たない者でも「障がい者雇用者」として報告したことが問題だったわけです。

ちなみに雇用率として換算できるのは、身体障害者手帳、知的障害者の療育手帳、精神障害者保健福祉手帳の交付を受けている方とされていますが、中央省庁では「うつ状態」(うつ病に近いがうつ病ではない状態)であると自己申告された方や、裸眼で極端に視力が低い方など、障害者手帳が発行をされていない方も障がい者の法定雇用率に算定していたということで、法律を率先して守らなければならない側がこのようなことを平気でしていたということは、社会に対して悪影響を与えたといって間違えない愚考中の愚行を行ったといえます。

そういった社会に与える悪影響は計り知れない訳ですが、こういった案件について処分者なしということなので…日本終了しました(閉店ガラガラ)といった感情です。

さらに以下のような質問事項も載せてあったので参考までに掲載します。

【障がい者コラム】障がい者雇用数水増し問題の底は?04

出典:https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/koyou/shougaisha/04.html

上記を見ていて、特に気になったのは「Q3.障害者はどのような仕事に向いているのでしょうか?」とありますが、そのアンサーがどうしても違和感を覚えます。

Q3. 障害者はどのような仕事に向いているのでしょうか?
A3. 「障害者に向いている仕事」「障害者に向いていない仕事」というものはありません。
一人ひとりの障害状況やスキルの習得状況、本人の希望・意欲に応じて、事務、販売、
製造からシステムエンジニアなどの専門職まで、様々な職種で雇用されています。

引用:https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/koyou/shougaisha/04.html

『「障害者に向いている仕事」「障害者に向いていない仕事」というものはありません』との答えは、一見障がいを者を特別視しないで健常者と同じように本人に会う仕事を…といったニュアンスでお答えされているとは思いますが、実際は身体、知的、精神、さらにはそれぞれの障がいにはそれぞれの特性があり、その特性を踏まえた上での絶対的な向き不向きは存在します。

しかしそういった個人のアセスメント(情報収集とそれに基づく課題整理)は、障がい者に限った事ではなく健常者にも言えることで、例えば明らかに引っ込み思案な人をいきなり営業職にさせるなど、日本の企業が最も苦手とする個を判断するところですが、こういった個々の能力や特性を評価することをせずに“向き不向きを重要視せず強引に型にはめ込もうとする押しつけ就労”は、古くからある大企業や官公庁に特に見られる気質のようにも感じています…あくまでも個人的見解ですが。

大袈裟にいうならば、今回中央省庁が障がい者雇用を水増ししていたのも、そもそも個人のアセスメントを行っていなかったからこそ、このような横行を許してしまったのではないか?とも思いますが…。

いずれにしても、企業や官公庁が個人のアセスメントをきっちり行い、成長の過程で定期的なモニタリングを行って、その時々において適材適所で人員を配置していけば、企業力も国力も今いる人材でもっと高めることもできるものと、私は確信しています。

最近は企業戦略や様々な分野で、PDCAサイクルが活用されていますが、健常者でも障がい者でも関係なくそういった視点を取り入れることがいかに重要なことなのか、一人一人がそういった意識を高める必要がある時代であると私は思のです。

PDCAサイクルとは?

Plan(計画)・Do(実行)・Check(評価)・Action(改善)を繰り返すことによって、生産管理や品質管理などの管理業務を継続的に改善していく手法のことです。

これをご覧になった皆様は、どのように感じられるのでしょうか…。

障がい者雇用 そしてその先は?

さて、【障がい者コラム】の『障がい者雇用数水増し問題の底は?そしてその先は?』について独断と偏見によってまとめてみましたが(笑)、上記記載内容項目を基に結論付けるとすると、今現在の社会構造が大きく変わらないと、このような問題や、これに似たような問題は一向になくならないどころか、今後ますます増えていくような恐怖すら感じています。

というのも、私は普段から地元の行政の方たちとお仕事をする機会も多いのですが、一昔前は、各部署に強いリーダーシップをもった人間がいて、そういったリーダーが部署内個々の個人能力を把握して適材適所で仕事をさせたり、リーダーが個人の仕事に対してカバーやフォローすることによって組織全体がバランスよく機能していました。

ところが昨今は、まず強いリーダーシップを発揮できる人材がいない…というか、パワハラなどを恐れて発揮できないと言ったほうが正確でしょうか、それによって、各個人が自由気ままに仕事をしていて統率がとれなく、当然仕事の効率も悪く、下手をすれば各個人が仲間の足を引っ張り合いっこしている状態が見受けられます。

当然こんなことはごく一部でのことと思いたいのですが、裏を返せば、特別に特殊な環境という訳ではない私一個人が目の当たりにこういった状況に出くわすということは、全国規模で一定数こういったことが行われている可能性もあるとも言えます。

話の内容が、もはや障がい者雇用からは脱線してしまいましたが、そういった働く環境の基盤が健常者ですらままならないのに、障がい者がそういったところへ入り込んで行って大丈夫なのか…不安を感じてしまいます。

また別の話ですが、新年度(2019年度)に向けて中央省庁では以前までの障がい者水増し雇用分を取り戻すべく、大規模な障がい者求人を行うそうです。

障害者採用、新たに4千人目標 政府、水増し受け促進策

中央省庁が障害者の雇用数を水増ししていた問題で、政府が検討してきた今後の障害者雇用促進策と再発防止策の骨子が19日、関係者への取材でわかった。中央省庁での障害者の法定雇用率を満たすため、統一試験による採用を実施するなどし、2019年末までに約4千人を新たに採用する目標を掲げる。22日に公表する。ただ、これだけ多くの障害者が働き続けられる環境を短期間に整えられるかは不透明だ。

引用:朝日新聞デジタル(2018年10月19日)https://www.asahi.com/articles/ASLBM3CXXLBMULFA004.html

この情報の意味するところは、ズバリ障がい者就業者の奪い合いです。

というのも、昔から定説として言われている「親方日の丸」(安定就労の最たるものの例え)最強説によって、今現在の障がい者就労先に不満や不安に思っている方からしてみれば、この中央省庁の行う4千人規模の障がい者求人は願ったり叶ったりの文字通り“渡りに船”な訳です。

しかも相手は、国民からの批判を逃れようと必死に障がい者の求人を行おうとしている“お国”な訳ですから、事実上、超売り手市場になるのです。

私も今の生活環境の変更が許されるのであれば、即、今の職場は退職して東京に居を移し、中央省庁就職を勝ち取りに行きたい思いですが、日本全国で私のような考えをする方は少なくないはずです。

そうなったら困るのは、現在障がい者雇用を受け入れている一般企業ということは言うまでもありませんね。

一般企業からしてみれば、障がい者法定雇用率違反をしても罰則もお咎めもなく、挙句の果てに一般企業が資金を投じて育てた優秀な障がい者就業者を奪われてしまうかもしれないなんて、とても容認できる内容ではありません。

もしこのブログをご覧になっている方の中で、障がい者雇用に係るお仕事をされている方がいらっしゃったら、国に対して断固たる声を上げていただきたいものです。

その内に中央省庁からの詳しい求人情報も発表されてくるとは思いますが、採用条件について注目していきたいところです。

さて、最後まで本題からは少し脱線気味となってしまいましたが、中央省庁のあまりに情けない行為の連発に、思わず熱量も上がってしまい、暑苦しい文章となってしまいましたが、こんなブログでも最後までお読みいただきありがとうございます。

今後もこのような問題がありましたら、私なりの見解をブログに書き記してみようかと思います。

最後までお付き合いいただき感謝申し上げます。

セイタロウ

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