出典:https://unsplash.com/photos/0PNVrbI7bZM
障がい者生活のセイタロウです。
このブログのこの記事をご覧くださりありがとうございます。
私は、頸髄損傷(受傷部位:C6)四肢麻痺という比較的重度な身体障害がある手動車いすユーザー です。
普段は障害のある方々の支援をする某障害者生活支援センターに勤務して相談支援業務を行っておりますが、そういった日々の業務経験を積み重ねるうちに、いつしか社会保障制度や社会福祉全般に詳しくなり、気が付けば社会福祉士という資格も取得することが出来ました。
そんな私セイタロウが、そういった仕事を通じて、身体、知的、精神という障害がある方々の支援をさせていただくうちに、今まで気が付かなかったような様々な世の中の仕組みのようなものに注目するようになりました。
参考
セイタロウのプロフィール障がい者生活管理人&著者セイタロウの自己紹介
それら内容についてはこの【障がい者コラム】のコーナーで徐々に紹介していこうと考えております。こういった内容に、ご興味がある方やない方にとっても、“へぇ~”と言っていただけるようなお役にたてるような内容を目指して情報発信していきたい所存でございます。
ニュースに取り上げられる 路線バスによる車いす使用乗客の乗車拒否
さて、今回この度この【障がい者コラム】のコーナーで取り上げるのは、『車いす利用者のバス乗車【乗車拒否は是か?非か?】』について、です。
ここ数年になって、路線バスで車いすを利用する乗客の乗車拒否が、大々的にニュースで取り上げられることが増えてきているように感じます。
この令和の時代に入ってからも、同様のニュースを多く聞きますが、その一例として、まずは先日、青森であったニュースをご紹介します。
この記事は、令和元年7月24日のYahoo!ニュースに載った「RAB(Radio Aomori Broadcasting)青森放送」からの引用記事です。
出典:https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20190724-00000458-rab-l02
リンク:車いす女性を乗車拒否か(青森県)
上記記事の概要として、青森市営バスの運転手が乗客としてバス停で待っていた車いすを利用する方に対して、「ほかのお客さんに迷惑だ」、「乗るなら事前に電話しろ」との趣旨の発言をしたとして、後に青森市が調査を行いその発言が事実であったということで、運転手がその乗客に後日電話で謝罪したとのことです。
ちなみに、青森市営バスには車いす使用者がバスに乗降する際に、事前に電話連絡を入れるシステムは存在しないとのこと。
また、滋賀県草津市の帝産湖南交通の路線バスでも、バスに乗ろうとした車いす利用者の男性が運転士に「乗車拒否」されたとして、やはりニュースで取り上げられています。
この記事は、令和元年7月14日のlivedoor NEWSからの引用記事です。
出典:https://news.livedoor.com/article/detail/16771904/
リンク:車いす対応バスなのに「次に乗ってくれ」 運転士「拒否」で40分待ち、「障害者は客として認識されていないのか」
上記記事の概要は、当時車いす乗車機能が付いているワンステップバスを運転していたバス運転士が、乗車に必要な「スロープの出し入れの仕方が分からない」との理由から、車いすを利用する乗車客に対して「次のバスに乗ってくれ」と一方的に告げ、その乗客を乗車拒否して、次の車いす利用者が乗ることのできるバスが来るまで40分以上待たせたという内容である。
その他に、SNSなどで「路線バスに乗車拒否をされた 車いす」と検索をかけると、さらにリアルな声が聞こえてくると思います。
実際の路線バスは殆どが車いす利用者を快く乗車させてくれます
私セイタロウも車いす利用者で、これまでも数多くの様々な市町で路線バスに乗った経験がありますが、やはり乗車拒否にあったことはいくどとなくあります。
こういうことをとある大学の学生に話した際に、後のフィードバックコメントに「健常者だってラッシュ時に乗車拒否されたことがあるから障害者が乗車拒否されることは特別なことではない」と書かれたことがありましたが、確かにラッシュ時は車いす利用者であろうと健常者であろうと関係なく乗車できないことはあります。
こちらが思い浮かべる状況が私の言葉足らずで上手く伝えることが出来ず、その時は誤解を招くような結果となってしまいましたが、「明らかに乗れる状況なのに乗ることが出来なかった」と、事細かくかみ砕いて伝えることの配慮が欠けており、詳細を正確に伝える重要性についても教えていただきました。
話はそれましたが、実際の現実はどんな状況なのかというと、私の知る限り、車いす利用者がバス停で待っていて目的のバスに乗り込もうとする際に、車いす乗車対応のノンステップバスで、明らかに空いているのに、乗車拒否をされることは十数回に1回程度(とにかくレアケース)で、殆んどの場合は運転手さんも乗客の方々も快く受け入れてくださり、車いす利用者でも難なくバス乗車することが出来ていると思います。(乗る時間帯や場所によっても違いはあると思います)
勿論、土地柄やその土地土地で営業している路線バスの事業者も当然のごとく皆違った考えを持っているので、そもそも車いす利用者が車いすに乗ったまま乗車できる、ワンステップバスやノンステップバスを運用していない事業者もあります。
さらに、ワンステップバスやノンステップバスを運用していたとしても、運用車数が1時間に1車両程度といったような路線もあるので、車いす利用者からしてみれば路線バスを利用し辛いから利用しない→車いす利用者が少ないから高額なワンステップやノンステップバスのような低床バスを増やすことに躊躇してしまう、といった図式が生まれてしまいます。
また、坂の多い町は車いす利用者にとっても暮らし辛い町となりがちなので、必然的にその街の路線バスでは、ワンステップやノンステップバスのような低床バスが普及し辛いといった状況もあるようです。
◆ワンステップバス
- 出入り口の床面の高さが路面から650mm以下のバス。
- 乗り降りする部分(乗降口)の段差が車内に1段あり、乗り降りの際に1段の段差を昇り降りする必要があるバス。
◆ノンステップバス
- 出入り口の床面の高さが路面から350mm以下のバス。
- 乗り降りする部分(乗降口)と、その他の一部フロアは連続して段差をなくしてあるが、タイヤハウスや後部座席部分には1~2段の乗降が必要な段差が設けてあるバス。
- 今後はノンステップバスが主流になるといわれている。
以前、ワンステップバスのスロープを出す場面を写真に収めたので、この場で紹介させていただきます。
1.車いす乗降のためのスロープを出す前
2.スロープ取り出し口を開けてスロープを引き出す
3.スロープを完全に引き出し上部の板を整える
4.車いす使用者を乗せるために迎えに来る
この時は、とある場所に旅行に行った際の某レンタカー会社の送迎バスでの一コマですが、これが実際の路線バスでの出来事と想定すると、その他に次の作業も加わってきます。
●バス停で車いす利用者が待っていたらマイクアナウンスで「車いす利用者の乗降を行うのでしばらくお時間がかかります」などと乗車客に伝える
●車いす利用者乗車場所に他の客が座っていた場合は席を移っていただくか立って乗車していただくようにお願いする(これは正直運転手さんはしんどいと思います)
●車いす利用者の乗降できるように折りたたみいすを折りたたみシートベルトなどの固定具も準備する
●上記写真のようにスロープを出す
●車いす利用者を押して乗車させる(これは力仕事なので運転手さんの体力を必要とします)
●所定の位置につかせて固定器具などで車いすが動かないように固定する(慣れていても時間がかかります)
●出したスロープをしまって扉を閉めて安全確認
●運転手さんは運転席に戻ってバス出発
以上が車いす利用者を乗車させる際に必要な作業です。
路線バスに車いす利用者の乗降作業を行っている際には、バス後部に以下のようなメッセージサインが表示されますが、交通量の多い狭い道路の場合は渋滞が起こってしまうこともあります。
この一連の動作を降りるときにも行わなければならないので、バスの運転手さんの負担といったら相当な労力であると想像しますが、それでもほとんどのバス運転手さんはこれを笑顔で快く行ってくださいます。
本当に、感謝の一言に尽きます。
そういったことを考慮すると、ごく一部の運転手さんが行ってしまった行動が、その他大勢の善良な運転手さんの信頼を奪ってしまい、大変残念にも思いますが、人間だれしも虫の居所がたまたま悪かったり、同じようなことが何度も続いて疲れてしまっていたということもあり得るので、むやみにその運転手さんを責めることも出来ませんし、そもそも運転手さんを責めても何の解決にもなりません。
あえて言うならば、運転手さんが悪いのではなく、このように労力をかけなければ車いす使用者を乗せることが出来ないシステムに、大きな欠陥があるように思います。
現状の路線バス交通システムでは、運転手、車いす使用者、乗降のために席を立ったり待たされる乗客、渋滞に巻き込まれる後続車両など、誰も得をしません。
この状況を変えるために、私たちに何ができるのか…。
来年には、東京オリンピック・パラリンピックが行われ、今後、高齢化がますます進み交通弱者も、老化による歩行困難者も日に日に増加していきます。
私のように、健常者であった人間がある日突然に障害者となってしまっても、困ることの少ない社会を構築するために、私たち一人一人ができる事がきっとあると思います。
高度経済成長期から現在に至るまでの自動車中心の社会で、年少者や、要介護者や、一部の高齢者や、障害者など、自分で自動車などを運転することができず、自家用の交通手段がないために、バスや電車やタクシーなどの公共交通機関に頼らざるを得ない人のことです。
特に公共交通機関が整備されていない山間部や、不採算のために路線バスや電車本数が減らされたり廃止となってしまった地区に住む、自動車などの移動交通手段を持たない人などが、買い物など日常的な移動にも不自由を強いられます。
車いす利用者がスムーズにバス乗降するために有効な設備機器
1.バスに乗降しやすい縁石一体型プラットホーム型バス停【バリアレス縁石】
株式会社ブリヂストンは、横浜国立大学(「交通と都市研究室」:中村文彦教授)、公益社団法人日本交通計画協会、株式会社アドヴァンスと、バス停バリアレス縁石を開発し、岡山県岡山市にある後楽園のバス停で実用化されました。 2019年6月10日より運用が始まります。
引用:https://www.bridgestone.co.jp/corporate/news/2019060701.html
出典:https://www.bridgestone.co.jp/corporate/news/2019060701.html
リンク:ブリヂストン ニュースリリース
こういったものがもっと普及すれば、足の上げ下ろしが困難になった高齢者や、ベビーカーや、車いす利用者のバス乗降もより簡単に行うことが出来そうです。
2.乗降に必要なスロープの電動化
↑この動画のコメント欄にもありましたが、このタイプは故障が多いようです(汗)
アメリカなどの路線バスでは、電動でスロープが出てくるタイプのバスを多く見かけます。
3.初めから折り畳みの状態になっている補助いすの導入
出典:http://europe-train-lab.jp/www/portfolio/europe/france/train/paris/citadis302-v2.html
ヨーロッパの低床トラム(路面電車)などで見かける、折りたたまれた状態で設置されている補助いす。
折りたたまれた状態で寄りかかってもよいし、座りたい人は椅子を広げて座ればよく、立ち上がれば自動的に折りたたむ補助いすであれば、運転手さんの負担も少なく、容易にそこを車いす利用者の乗車場所とすることが出来ます。
以上のように、今ある技術やアイディアで、もっと良い世界を作り出すことは可能です。
まとめ
さて、このような記事としてまとめてみましたが、最後までお読みいただきありがとうございました。
この記事をお読みくださった皆様は、どのようにお感じになられたでしょうか…。
残念ながら、路線バスの乗車拒否はあります。
しかし、殆んどの路線バス運転手さんは、日々快く車いす利用者の乗車にご尽力くださっています。
今後必要なのは、運転手さんの負担を一つでも減らすことです。
今ある技術アイディアで、世の中はもっと良くすることが出来ます。
健常者であっても、高齢者であっても、障害者であっても、自由に暮らしたいという想いは一緒ですが、誰かの犠牲を踏み台にして成り立っている自由であるのならば、やはりそこは是正するべきだと私は想います。
このような内容でしたが、いつか、どこかで、どなたかのお役に立てる内容であったら嬉しく思います。
最後までお読みいただき、ありがとうございます。
セイタロウ